其の捌:絵

 

会社が、下請けじゃない我が社オリジナルのアニメを作るとか言い出した。

確かにそっちの方が売れた時の利益はでかいし、会社の知名度も上がる。

でも、それを誰が作ると思ってんだよ……。とかぼやきつつ、取り敢えず一作目は世に出した。

 

 

 

俺が毎日締め切る窓を、サンデーは毎朝俺に断りも無く開ける。

向かいのビルに顔をぶつけんじゃねえかってくらい、身を乗り出して、少しでも太陽の光を浴びようとしている姿は、初め不気味だったが途中から面白いなぁと感じるようになった。

そんで最近はもう気にも留めなくなった俺は、サンデーの気が済むまでの僅かな空き時間を使って、次回の新作に使う人物設定画を描いていた。

職場の同僚とか、近頃はパソコンのソフトを使って描く奴が多いが、俺はパソコンを起動させる時間や電力が勿体ないタイプだから、そういうラフスケッチには適当なコピー用紙やチラシの裏とかに描く。(だから匿名で出しても俺が描いたって職場じゃスグにわかっちまう)

新作っても毎回似たような企画しか出ないし、設定も似たり寄ったりなモンが多い。何が重要って、人物の見た目が一番だ。設定なんてオマケみてーなモンだしな。(…ともう辞めちまった先輩が言ってた)

俺はチラシの裏にペンを走らせながらあーでもないこーでもないと、主役の女の子を描いていた。

何か、どれもいまひとつなんだよなぁ…とか思いながら、何となく、まだ窓から身を乗り出しているサンデーを見た。

 

どうせ今のところ俺にしか見えないし、姿形をちょいと変えれば、パクリにはなんねーよな…?

 

まずはサンデーをスケッチする。窓から身を乗り出す変な体勢のサンデーを、頭の中で直立させてから紙に描く。…顔、真正面向いてくんないかな。そう思っていたらサンデーがこっちを見た。

 

「…貴様、何を見ておる」

「おっし、サンデーそのまま!動くなよ!?」

「何なのだ、一体」

 

首をちょっと曲げたサンデーは、眉をひそめながらも言われた通り動かないでいてくれた。

サンデーの顔のアップだけをまずは紙の隅に描いておき、全身像をその横に大きく描く。

 

「よし、体勢そのままで体ごとちょっと右向いて!」

「む…。こ、こうか?」

「あ~…もうちょい、右…オッケイ!じゃあ次俺に背中見せて!」

 

俺の言う事に素直に従ってくれているサンデーは、訝しげな声を出した。

 

「貴様、何のつもりだ?我の背に何があると言うのだ」

「まあ気にすんなよ。そんで次はその位置からまた右見て!体の向きも変えて!」

 

サンデーは、ついに合点がいった!みたいな声を出した。

 

「――そうか、了解したぞ!これは何かの儀式だな?!」

「…ん、まぁ、そんな感じかな…?」

「これで何を呼び出せるのだ?」

「……魔法少女…」

「…?」

 

サンデーには解らなかったみたいだが、そうでなきゃ困る。俺は、このスケッチを元にして、オリジナルには無い可愛らしさと女の子らしさを強調した絵に描き直した。

 

 

そういや、サンデーって…男、だよな?