現 代 妖 精
異
聞
其の陸:空
自称妖精サンデーは、どうやら本物の妖精さんのようだ。
他の奴らに見えないから、俺の見た幻か何かかと一瞬でも思っちまったが、そうでもないらしい。
打ち合わせも何とか終えて、作画スタッフと今後のスケジュール調整も済ませた後は、やる事もねーし、さっさと帰る事にする。ここ来た時から不気味なぐらい静かなサンデーも、大人しく俺の後ろについて来ている。…このまま、これくらい無害だと良いんだけどなぁ。
ビルから出て、空模様がどんよりと灰色になってるのを見て、傘も持たずに来たのを思い出した。本格的に降り出す前に、何とか帰れそうか…?
走り出そうと足を大きく踏み出そうとした時、後ろでべしゃ、と何かが倒れる音がした。踏み出した足で踏鞴を踏んで、俺はバランスを崩しつつも振り返る。
サンデーが、顔から地面に倒れこんでいた。起き上がることも出来ない様子で、倒れた格好のまま、ピクリとも動かない。…ここは、近寄って助けるべきだよな…?
「おい、どうしたんだよ?」
「日、輪…よ…」
「はぁ?何言ってんだ、ニチリンって…」
サンデーは俺の言葉も耳に入っていないらしく、いつもドコに持ってんのか分からないハタキを掲げた。ただ、うつ伏せで顔が地面と仲良く向かい合った変な体勢のままだったけど。
「照覧あれ――!」
ぴかー。
…とかいう効果音が、俺には聞こえた気がした。実際、どんよりして薄暗かった空が、いきなり眩しく光り出した。何事かと見上げれば、さっきまでの曇り空が青空に変わっていた。
雲一つ無い空に、日差しが目に沁みる…じゃなくて、どうなってんだコレ。
あんまり信じたくねーけど、俺にはサンデーが雲を追い払ったようにしか見えない。
「これが、我が日輪の力。雨を散らし雲を払うなど造作も無い事」
「…俺の考えてる事勝手に読むなよ」
いつの間にか立ち上がっていたサンデーは、すました顔でハタキを得意げに振る。先っちょが一々俺に当たるのは、もう、アレだ。わざとだと了解してもいいんだな?
「我が采弊を振るう先に貴様がおるのが悪いのだ」
「痛っ!だから、当たるといてーんだよそのハタキ!」
しかも平然と事故だとか言ってやがるし…。明らかに人災だろ、それ。
またどこかにハタキを仕舞ったサンデーは、俺の言う事をさらりと無視し、道のど真ん中だってのに、両手を頭の上まで掲げて視線を斜め上に固定したまま動かない。…光合成してる植物を擬人化するとこんな感じなのか?植物の擬人化、ってのも斬新な発想だけど。しかも花とか木じゃなくて緑色の葉っぱだし。
それはともかく、輪郭が透けるような強い太陽の光を、全身に浴びているサンデーは、単純にキレイな存在だった。
コレが見えてない人には、俺は、ぼんやり道の真ん中見てるアブないヒトにしか見えないんだろうなぁ。って気付いたので、俺が通報される前にサンデーを連れて家に帰る事にした。